自己紹介

大学院への道 ⑦ 入学試験

大学院への道 シリーズ 過去の記事はこちら
① 専攻を決めよう
② 学費についての謎
③ 申し込みをしよう
④ アポスティーユ
⑤ 健康診断
⑥ 日本から書類が到着



今日はいよいよ、大学院の入学試験についてです。

以前 「大学院への道 ③ 申し込みをしよう」 に書いた必要書類を国際交流課(うちの大学では国際部と呼ばれている)に提出して、受験の日を待ちます。

  1. オンライン申し込み(これは仮申し込みなので、すでに完了)
  2. パスポートのコピーと、公証役場で認証を受けた翻訳
  3. 学歴証明書のコピーと、公証役場で認証を受けた翻訳
  4. 学歴証明書の原本
  5. 国外教育機関等が発行した書類に関する認定書
  6. 写真(3x4㎝ のものを12枚)
  7. 健康診断証明書(形式 086у)

私の場合、2と3についてはアポスティーユをつける作業が終わっていないので、国際部の部長のスタンプを押してもらって手続きを進め、書類の原本は無事合格後に日本に送り返してアポスティーユを取得することにしました。

あと、5の手続きですが、これはアポスティーユのついた卒業証書が無いとできないので、こちらも先送り。嗚呼、この厳しいんだか緩いんだかよくわからない手続きが、いい意味でも悪い意味でもロシアっぽい。

さて、肝心な試験の実施要項は大学のサイトで見ることができます。
私が受験した、外国語学部の修士コース 「外国語教授法と翻訳理論」の入学試験の実施要項はこちら

日本の大学院については全く知識が無いのですが、筆記試験と口頭試問の二本立てが一般的なのでしょうか??ロシア(というか、少なくとも私の勤め先)の場合、大学院の入学試験は口述試験オンリーです。3つの課題と準備時間が与えられ、それぞれに口述で回答、かつ試験官からの質問に答えるというスタイルです。

因みに私の専攻の試験内容は以下の通り。
  1. 文献分析(外国語の文章を読んで要約&分析)
    ロシア人学生は英語、外国人学生はロシア語のテキストを読みます。
  2. 理論問題(外国語教授法や翻訳理論などについて)
  3. 文章の翻訳
    ロシア人、外国人共に英文露訳をします。
①と③はその場でテキストを渡されるので、その言語に日々触れておく以外にこれといった対策はできないため、6月からちょこちょこと②の対策をしていました。問題の例も実施要項に書いてあるので、これに沿って準備すればOK。

私がした対策は、隙間時間にとにかくひたすら「外国語教授法入門」と「翻訳理論」のテキストをスマホの音声読み上げシステムを使って聴きまくり、その内容を出題予定の問題に合わせて(かなり大雑把に)まとめ、口頭で答える練習をした程度。本当は実施要項に参考文献がどーっさり、20以上載っていたのですが、全部読んでいる時間も視力もない!というわけで、超即席付け焼刃。勿論辞書を引いても意味の分からない専門用語もちらほら……

そんな状態で迎えた試験前日。

試験前日には「Консультация перед экзаменом(試験前オリエンテーション)」があります。ここでは大学側から試験についての説明があり、受験予定生たちは分からないことを質問することができます。

私の試験は20日だったので、試験前オリエンテーションは19日でした。ガッツリ渇を入れられて、撃沈して帰ることを予想していたのですが、実際はかなりアットホームな雰囲気でした。来ていた学生も全部で10人程度。試験を担当する元学部長のK先生は
「高等教育機関における外国語教授法や通訳理論が専攻できる大学院はとてもめずらしいんですよ~」とか、
「2年間、かなりみっちり勉強することになるけど、しっかりサポートするよ~」とか、
まるで既に入学が決定しているかのようなノリ。しかも試験の説明を聞いてみると、英露・英英辞典、そして私に至ってはなんと露和辞典の使用もOK。

そして極めつけには
そう。唯一(そこそこ)準備していた課題②が「外国人にはぶっちゃけキツイっしょ」という理由で免除になったんです。ラッキー!と喜ぶ反面、地味に頑張っていたので残念な気持ちも入り混じってなんとも複雑な心境でした。

よくよく考えてみたら、リャザン州もリャザン大学も常に財政難。私のような外国人やその他留学生は大学にお金を落とす貴重な存在。救いようがない相当な状態でなければ、落とされることはまず無いのかもしれない。入る人を選ぶためというよりは、コースが始まったらどのレベルからスタートするかを教師陣が知るための試験……といったところでしょうか。(※あくまで私が受験するコースの話)

そして迎えた試験当日、私の頭の中は合格するか否かではなく、全く違うことで埋まっていました。それはずばり
試験官も、一緒に受験する大半の学生もロシア人。つまりはロシア語ネイティヴ。母語話者の前で私のヘッタクソなロシア語を披露せねばならんのか……
という、至極当たり前のこと。外国語を勉強している人なら分かってくれると思うのですが、外国人と第三言語で話すのと、外国人と相手の国の言葉で話すのとでは緊張感が全然違います。後者の場合、文法ミスなどをできるだけするまいと、細心の注意を払います。

普段の生活ではロシア語を使ってマーケットで値切ったり、ブラックジョークを言ったり、やりたい放題なのですが、それは「外国語としてのロシア語」よりも「自分がしたことをするためのツールとしてのロシア語」という感覚が強くなって、相手がネイティヴだからキッチリ正確な文法で話そうという思考が抑制されているのでしょう。ですが試験となったら話は別。

幸い、外国人受験者向けのテキストはかなり難易度の低いものだったのですが、そういえば相手、ロシア人だ、と今更気にしだしてしまった私は回答前の準備時間をみっちり、語彙・文法の確認、そして発表の無声リハーサル(←笑)に費やしたのでした。

問題①の要約用のテキストは19世紀のアメリカ人小説家、オー・ヘンリーの短編集”Strictly Business” をもとに作られたソ連映画、”Деловые люди” の一節。
問題③で英露翻訳したのは駅を舞台にした小話。

どちらも発表の時に多少文法ミスはあったものの、自分としては「まぁ悪くは無かったかな」、程度の出来でした。

今回の試験で一番難しかった問題は、問題①にあった質問「急性/慢性リウマチとは何か説明せよ」というもので、リウマチという病名は聞いたことがあったのですが、どんな病気なのかは知らなかったので、露英辞典で英語のスペルを確認→英英辞典で病気の説明を調べました(笑)そして「リウマチとは関節や筋肉が痛む状態のことです。急性は基本的に1度治療すれば終わりですが、何度も繰り返すと慢性化する可能性があります。慢性化した場合は定期的、継続的な治療が必要になります。」といった内容をロシア語で答えました。妊娠中に見まくった小児医療関連の動画が役に立った瞬間でした。

さて、試験結果ですが、当日の夕方には大学のウェブサイトで発表され、無事合格しました。点数は100点中80点なので、まずまずといったところでしょう。それよりむしろ、パスワードなどを使う必要が全くない、誰でも見られるところにフルネームと点数を一覧にして掲げている、大学の情報管理体制のほうが気になってしまいました(笑)

というわけで、無事(?)大学院入学が決定いたしました。ここまでお付き合いくださった皆さん、ありがとうございます。

これからは以前書いた学費の割引について調べるミッションが始まります。無事に学費を安くできるのか、乞うご期待。

15年ぶりの入学試験が終わって安堵している人の図

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