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ロシアの大学(院)の卒業試験

6月26日は、大学院の卒業試験でした。無事に合格できたので、今日はロシアの国立大学の卒業要件や卒業試験の特徴について書こうと思います。



 ロシアの国立大学(院)の卒業要件

ロシアの国立高等教育機関(大学や大学院)を卒業するためには、

  1. カリキュラムに含まれる科目と実習の単位取得
  2. 卒業論文の執筆と発表
  3. 卒業試験合格
という3つの要件を満たす必要があります。
それぞれについてもう少し詳しく書いていきます。

カリキュラムに含まれる科目と実習の単位取得

日本の大学の場合、その年に開講されている講義の一覧と自分の専攻の必修科目などを照らし合わせて、自分で履修登録をするので、学生一人一人が自分専用の時間割があるのが一般的かと思います。

ロシアの場合、専攻ごとに時間割が決まっていて、その時間割に書かれている授業は全てその学年のそのセメスターにおける「必修科目」と「選択必修科目」です。

例えば外国語学部の場合、第一外国語やそれに付随する科目が必修科目で、第二外国語が選択必修科目といった具合です。

日本の大学で言うところの一般教養科目のようなものもありますが、これも選択の自由はなく、哲学、心理学、ラテン語、情報科学、体育などが必修科目としてグループの時間割に組み込まれています。

※大学院は専門科目がほとんどで、一般教養科目は心理学と情報科学のみでした

そして、各科目ごとにセメスターの終わりに試験があり、この試験に合格すると、日本で言うところの単位がもらえます。

ロシアの大学のセメスター試験は「ザチョット」と「エグザーミェン」という2つのタイプがあるのですが、それぞれについては過去の記事をご参照ください。

ロシアの大学の試験 ① Зачёт(ザチョット)

ロシアの大学の試験 ② Экзамен (エグザーミェン) 試験課題編

ロシアの大学の試験 ③ Экзамен (エグザーミェン) 試験の成績編


また、カリキュラムには専攻に関連した実習もあり、実習が無事終了すると単位がもらえます。

カリキュラムに含まれる科目や実習を全て終了すれば、第一関門はクリアです。


卒業論文の執筆と発表

2つ目は卒業論文。これは特に説明は必要ないかもしれません。

論文執筆の過程で日本の大学との違う点を挙げるとすれば、ゼミナールが無いことでしょうか。

教授と、その教授が指導をする学生たちが集まって研究の経過や成果について発表しあったりする機会はありません。

あとは「実習」という名の論文執筆期間がカリキュラムに含まれていて、その間は授業がなくなる、というのも日本の大学にはないシステムかと思います。

卒業論文の発表はふつう、卒業試験の後に行われます。詳細についてはまた後日書きます。


卒業試験合格

そしてこれが今回のメインテーマ、卒業試験です。

日本の大学も医学部や法学部などは卒業試験があるかと思いますが、文学部はふつう、卒業試験はないか、名目上存在しても実質は卒論の執筆と発表、というパターンが多いかと思います。

ロシアの大学は専攻が何であれ卒業試験があり、またその試験も単に合格・不合格ではなく、優・良・可・不可のように成績がつきます。

では、ロシアの大学(院)の卒業試験について書いていきます。


卒業試験=国家試験?

ロシアの大学(院)の卒業試験はロシア語で Государственное аттестационное испытание (国家試験)と呼ばれます。

何かの職業に従事するための知識や技能を十分に備えているかを見るためのもの、という点では意味が重なるのですが、日本人の私たちがイメージする”国家試験”とは少々異なります。 

試験は口述形式

まず試験は筆記形式ではなく口述形式で行われます。

問題を受け取った後、1時間ほどの準備時間があり、試験官のところに行き回答を発表します。試験官はふつう3人で、そのうち1人は他学科の教師が務めます。

回答の正確性は勿論のこと、順序だてて分かりやすく話すことができるかなども評価対象に入ります。


試験問題が事前に知らされる!?

卒業試験は理論問題と実践問題の2つのタイプから成ります。

例えば、私は「外国語および通訳・翻訳教授法」が専攻なのですが、卒業試験の課題は

  • 通訳・翻訳理論の問題
  • 外国語教授法の問題
  • 初見テキストの翻訳

の3つでした。

初見テキストは当日まで内容が分かりませんが、理論問題は試験の2週間ほど前に、出題される問題の一覧が配布されます。出題内容はこれまでに勉強した範囲全てです(笑)

私が受けた試験の場合、通訳・翻訳理論が12問、外国語教授法が12問ありました。


試験問題はくじで決まる

先ほどの理論問題、計24問あると書きましたが、すべての問題に回答するわけではありません。

この卒業試験ですが、通常のセメスター末試験(エグザーミェンの方)同様、くじ形式で行われるのです。そのため試験の際に回答するのはくじで引き当てた問題のみなので、通訳・翻訳理論1問、外国語教授法1問です。

そして翻訳用のテキストも皆に違う文章が行き渡るようになっているので、隣の席の人のテキストを見ても何のヒントにもなりません。

自分が得意な分野の問題やテキストが当たればラッキー!勿論その反対のことも起こりうる…まさに運も実力のうちなのです(笑)


大学によって内容が違う!?

ロシアの国立高等教育機関で行われる国家試験は、その機関によって出題内容が多少異なります……というか、試験の課題について国が定めた大まかなガイドラインがあるんですが、出題内容はそれぞれの大学が決めているので、必然的に大学によって内容や難易度に差が出てしまうのです。

※あくまで外国語学部の話です

日本の大学と比べて、ロシアの大学は情け深い…というか、学生を簡単に留年・退学させないような風土があります。

それが卒業試験にも表れていて、卒業試験で落とされることはまずありません。グループの全員が合格できるよう、問題の難易度を学生たちのレベルに合わせて、各大学が多少調整しているのです。

もちろん、専攻が同じであれば、理論問題はどの大学でもだいたい同じはずですが、実践問題に関しては各大学が多少難易度の調整を行っています。

例えばテキストの翻訳なら、「主専攻の外国語はその言語の母語話者向けに書かれたメディア記事を使う」という指針はどの大学も共通なのですが、実際にどの記事を使うかは各大学が決める…といった具合です。


試験の結果について

セメスター末試験同様、この卒業試験も結果が当日…というか試験終了後ほぼすぐにわかります。

グループの学生全員が回答し終わると、学生たちは廊下に出るよう指示され、試験官たちの話し合いが終わると教室に呼び戻されます。

試験の結果は一人一人聞かされるのではなく、グループ全員の前で発表されます。プライバシーとかお気持ちに配慮的な概念はないと思ってください(笑)

……そもそも回答を試験官に発表しているところもほかの学生に丸聞こえなので、お互いの成績を聞いたところで「やっぱりねー」ぐらいの感情しか湧かないというのが正直なところです。


最後に

今日はロシアの大学(院)を卒業するためのステップや卒業試験の特徴について書いてみました。

筆記試験が苦手な私にとっては、このような口述形式の試験のほうが向いているな…と、つくづく実感しました。

皆さんはロシア式の大学の試験、受けてみたいと思いますか?

次回は卒論発表について書こうと思っています。

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